第15回大会課題研究の登壇者募集について

                             課題研究活動委員会委員長濱名篤(関西国際大学)

 本年度の課題研究は新しい試みとして,課題研究委員会で選定した下記の課題について,会員から自薦での登壇者の公募を行います。皆さんにとって関心が高い課題について,研究実績や教育実践をお持ちの方を選定して,学会活動を活性化していきたいと思っています。多くの会員の応募を期待しています。

       課題研究のテーマ:「ウィズコロナ・ポストコロナの初年次教育」

(1)問題の所在と背景
 新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)が世界中で拡大し,WHO(世界保健機関)が2020年3月11日に世界的流行としてパンデミック状態であることを宣言して以来,世界はCOVID-19の影響を受け続けている。この間ワクチンが開発され,学校・高等教育も従来のオンライン授業一辺倒から対面授業へと戻りつつあるが,新たなCOVID-19の株が出現し,更なる感染が世界中で広がるなどCOVID-19がいつ収束へと向かうのかを予想することはむずかしい。
 人類はウィズコロナを前提とし,ポストコロナの生活を考えていくことが求められているといえる。経済活動への影響はもとより,高等教育機関へのこの未曾有のコロナパンデミックの影響は甚大かつ計り知れない。とりわけ,コロナ世代と呼ばれる2022年度に3年生になる世代は,入学時からオンライン授業が標準的な授業形態でもあり,かつ部活動や正課外での活動も極めて経験することが限られていたといえる。先日公表された2021年度大学生協調査においては,コロナ禍における大学生が不安を抱えている状況が明らかになった。
 学生⽣活充実度について,前年からは回復したが,2年⽣が低く,平均登校日数はコロナ禍以前の64%程度となっている。サークル加入率は低く,4人に1人が入っていないし,今後も入ることがないと回答している。とりわけ,2年生の25%が人間関係に悩んでいるという回答が見られる。といったことが本調査結果の概要として示されている。従来,初年次教育は,高校から大学への円滑な移行を支援するための教育として,学業面での移行のみならず,新入生の自己肯定感を向上させ,大学というコミュニティへの帰属意識を持たせることで,人間関係を円滑化することをも目的とし,実際に寄与してきた。それゆえ,初年次教育がほとんどの高等教育機関において,普及し,プログラムとして構築されてきた理由でもあった。しかし,COVID-19の拡大による状況において,従来対面型でこうした機能を充実させ,貢献してきた初年次教育が,果たしてオンラインが中心となる状況において,どれだけこうした機能を果たし,新入生を導いているかについての研究やグッドプラクティスの蓄積もほとんどみられない。また,オンラインテクノロジーやDXの発達によりこうした初年次教育の機能をどれだけ果たしているかというデータも提示されていない。
 ポストコロナにおいて,従来通りに大学の姿に戻るとは予想できないとすれば,現在のウィズコロナの状況において,初年次教育が,いかに新入生の自己肯定感を支え,心理的安定に寄与し,将来への確実なプランを立てるかなど,今後の新入生が充実した大学生活を送るうえでの鍵となると思われる。
 そこで,グッドプラクティスだけでなく,研究としての蓄積にもなるような内容を深めていくことを目的として,課題研究グループでは,2年間にわたって,このテーマを扱い,学会としてこの課題に取り組むことにした。
今後の学会活動を担っていく人材を発掘するということに鑑みて,本テーマやサブテーマに関連して研究を行っている,あるいは実践を行っている話題提供者を公募するという形で発掘することにしたい。
 なお,大テーマは,ウィズコロナ・ポストコロナの初年次教育であるが,サブテーマとして以下の4つを立てている。サブテーマは必ずしも1つのみではなく,複数にまたがる場合も可とし,発表には,事例(実践)に分析的な観点も含まれていることを要件としたい。

 サブテーマ
  1) 自己効力感,自己肯定感,心理的安全性,帰属意識(所属感)
  2) DX・オンラインとリアルな体験,グループワーク
  3) キャリアプラン,ライフキャリア
  4) 入学前教育
  5) 教育過程や学修成果の分析や評価の方法

(2)選考の方法・スケジュール
 この選考にあたっては,皆さまのこの2年余のコロナ禍のもとでの初年次教育を実践されてきた経験を通じての好実践や研究成果から,これからの初年次教育や大学教育の在り方を考えつつ,課題発見から課題解決につなげることをめざし,今年度と次年度の2年間を通してこの課題をとりあげていきます。
 課題意識の明確性,実践実績または分析の説得力,発展性,汎用性,などの観点から審査いたします。
 募集人員:3名程度

(i) 書類選考
 800字程度に,研究報告の概要についてまとめてもらう。①タイトル,②サブテーマのいずれに該当するか(複数可),③報告内容(内容,方法),④氏名,所属を記載
送付先:学会事務局jafye-office@bunken.co.jp
締め切り:5月6日(金)12時
結果通知:5月9日(月)

(ii) 審査委員会で書類選考通過者に面談(Zoom)
 5月15(日)~21日(土)頃を予定

(iii) 課題研究活動委員会で選考
 決定後、結果を通知、登壇者の審査・調整を行い,サブテーマ,登壇者確定

(iv) 登壇者打合せ:5月下旬以降を予定

(3)審査担当者
 課題研究活動委員会:濱名篤,山田礼子,森朋子,山田剛史