「2021年度教育実践賞」審査結果報告

                                    審査委員長成田秀夫(大正大学)

 早春の候,会員のみなさまにおかれましては,新年度を迎えますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素より学会の運営にご高配を賜り,厚く御礼申し上げます。 さて,この度,「2021年度教育実践賞」につきまして,会員投票と審査委員会での審査が終了しましたので,結果のご報告をいたします。 2021年度の教育実践賞には8つの応募があり,審査委員会が,独創性,適切性,有効性,汎用性,有用性の5つの観点から構成されるルーブリック(応募要領で公表)に基づいて審査を行い,以下の4つの取組が1次審査を通過しました。
 学会ホームページにてプレゼン動画・資料を公開した後,会員投票と審査委員の評価を行いました。

No 申請者/所属大学 取組み名称
1 西谷尚徳(立正大学) 専門学修への移行としての官学連携事業「協働型模擬選挙」の実践
2 光成研一郎(神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部) チームで学ぶ【入学前教育×初年次教育によるシナジープログラム】の構築~入学前から初年次を貫く“まなびのプラットフォーム”~
3 関田一彦(創価大学) 「学術文章作法Ⅰ」を中心とした文章力向上プログラム
4 廣瀬清英(岩手医科大学) 多職種連携のためのアカデミックリタラシー~PBL ワークショップ「信頼される医療−チーム医療−」(2021年度型)~
 会員の投票を踏まえ,審査委員会で検討したところ,2つの取組への投票数が僅差であったこと,また,今回はコロナ禍の影響もあり,オンラインでの投票数が少なかったことを踏まえ,次のように表彰することといたします。

優秀賞 光成研一郎/神戸常磐大学・神戸常盤大学短期大学部
優秀賞 関田一彦/創価大学
 受賞されたみなさま,おめでとうございます。次回大会での表彰式,及び,学会誌での審査報告に先立ち,1次審査を通過された4つの取組について,審査委員のコメントを踏まえ,前頁の表で各取組に付した番号順に簡単に講評を述べさせていただきます。

No 講評
1 市民教育や政治リテラシーの育成を目的とするPBLであり,有用性の高い取組である。ただし,法学部カリキュラムではなく,1ゼミのみで実施されている点,1年生のゼミ「基礎演習」と連動が薄い点など,初年次教育として展開が乏しいのが惜しまれる。興味深い取組であるが,組織的な取組など,今後の発展に期待したい。
2 本プログラムは大学と短大が連携して,全学必修の初年次教育科目として実施されている。協働力やロジカルコミュニケーションの育成などを,学生同士の学び合いを通じて実践している。ただ,具体的なコンテンツの明示がないことが惜しまれる。また,反転授業,コメント返し,eポートフォリオなどの実施が「時間外学修時間の実質化」に大きく寄与している点はおおいに評価できる。ただ,この点についてもエビデンスの提示があれば説得力が増したと思われる。
3 類似の取り組みは他の大学も多いとは思われるが,大学のビジョンに基づき全学必修科目とされている点は大いに評価できる。多面的かつ論理的な思考力を養成する科目であり,「思考技術基礎」との連携という点で,より「読む」ことと「書く」ことの連携による思考の深化が諮られるような授業内容の開発も期待したい。
4 本取組は医療分野において現代的ニーズとされるチーム医療をカリキュラムに落とし込んだ教育実践である。初年次と高次年カリキュラムとの連続性,複数学部における全学展開の初年次教育,PBLとアカデミックリテラシーとの組み合わせた総合的な初年次教育プログラムなど,参考にできる知見が多くみられ,今後の発展に期待したい。
 4つの取組については,学会ホームページのマイページからご覧いただけますので,見逃している方は,ぜひ視聴してください。 ところで,2021年度の実践賞については,コロナ禍の影響もあり,オンライン投票にせざるを得ませんでした。学会ホームページにアクセスしてご覧頂いた会員が少なかったようです。次回大会は対面を想定しておりますが,今後の状況によっては,オンライン開催も想定されます。次回の実践賞については,今回の反省を踏まえ,できるだけ多くの会員に投票いただけるよう検討いたします。
 また,今回の実践賞に関する今後のスケジュールは,次のようになっています。
    2022年9月第15回大会にて表彰状を授与
    2023年3月初年次教育学会誌に審査結果報告書を掲載
 以上,審査結果の報告です。引き続き会員のみなさまには,倍旧のご厚情を賜りたく,切にお願い申し上げます。